日本の公的年金制度は、日本国内に住むすべての人に加入が義務付けられています。
しかし、実際は様々な事情で国民年金保険料が支払えない、支払いが困難になる場合が考えられます。
今回は国民年金保険料が支払えない時に活用できる制度を解説します。
国民年金は3種類に分けられます
国民年金は3種類に分けられ、どの制度に加入するかにより保険料の納め方が違ってきます。
区分 | 対象者 | 納付方法 |
第1号被保険者 | 20歳以上60歳未満の ・自営業者 ・学生 ・無職 など2号・3号以外すべての人 | 自分で納めます |
第2号被保険者 | 厚生年金や共済年金に加入している ・会社員 ・公務員 など | 給与から天引きされます |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている ・配偶者 | 収める必要はありません |
2号、3号の人は厚生年金保険料に国民年金保険料が含まれます。保険料は給与から天引きされますので、支払いが困難になることはありません。
しかし、1号の人は自分で納めますので、収入が少ないと保険料支払いが困難になることが考えられます。
実際の納付率を見てみましょう。
厚生労働省の資料によりますと、第1号被保険者の令和元年度分保険料納付率は69.25%となっています。
納付率 | |
平成29年度分保険料 | 66.34% |
平成30年度分保険料 | 68.12% |
令和元年度分保険料 | 69.25% |
実に3割の人が保険料を納めることができない、未納状態となっています。
保険料未納のリスク
国民年金保険料が支払えない、未納にはリスクが伴います。
老齢基礎年金が受給できない
老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取ることができます。
引用元:日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
老齢基礎年金は65歳から受給できます。ただし未納期間が長く、受給資格期間が10年未満の場合は、老齢基礎年金を受給することができません。
年金は老後の生活を支える大切な収入源です。「今」は大丈夫だと思ってもその影響は「老後」にやってきます。
障害基礎年金・遺族基礎年金が受給できない
老齢基礎年金は老後の話ですが、未納が続くと万が一の時に「今」の生活に影響が出ることもあります。
それが障害基礎年金と遺族基礎年金です。
思わぬ事故や病気になった時に支給される障害基礎年金、一家の大黒柱が亡くなった後に支給される遺族基礎年金、これらの年金は年齢にかかわらず、保険料を支払っていれば支給されます。
しかし未納期間が続くと支給対象から外れてしまいます。万が一の時に年金を受け取れないのは大きなリスクです。
障害基礎年金 保険料納付要件
初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
遺族基礎年金 保険料納付要件
- 被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。(ただし、死亡した者について、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が加入期間の3分の2以上あること。)
- 令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の未納がなければ受けられます。
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
国民年金保険料の免除制度・猶予制度を活用しよう
国民年金保険料が支払えない時に活用できる制度があります。
それが国民年金保険料の免除制度・猶予制度です。
国民年金保険料の免除制度
所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合は、ご本人から申請書を提出いただき、申請後に承認されると保険料の納付が免除になります。
引用元:日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
免除される保険料は所得に応じて
- 全額免除
- 4分の3免除
- 半額免除
- 4分の1免除
の4種類に区分されます。年金額は免除割合によって計算されます。
国民年金保険料の猶予制度
20歳から50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合には、ご本人から申請書を提出いただき、申請後に承認されると保険料の納付が猶予されます。これを納付猶予制度といいます。
※平成28年6月までは30歳未満、平成28年7月以降は50歳未満が納付猶予制度の対象となります。
引用元:日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
猶予制度はあくまでも”猶予”です。猶予期間は受給資格期間に算入されますが、年金額には反映されません。年金額に反映させるには追納が必要です。
また学生については、申請により在学中の保険料納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。
免除・猶予制度のメリット
免除・猶予制度を活用すればその期間は受給資格期間に算入されます。
受給資格期間への算入 | 受給金額への反映 | |
免除制度 | 〇 | 〇 |
猶予制度 | 〇 | × |
学生納付特例制度 | 〇 | × |
未納 | × | × |
未納では受給資格期間へ算入されません。
「老後」や万が一の時に「今」の生活に影響を及ぼさないため、免除・猶予制度を活用してください。
年金は助け合いです。まずは相談しましょう。
公的年金制度は高齢になったとき、障害を負ったとき、一家の大黒柱が亡くなったときに社会全体で支え合う仕組みです。
一人一人の年金保険料が誰かの助けになり、支えとなっています。
しかし、様々な事情で年金保険料を支払うのが難しいこともあります。
そのような時は一人で抱え込まず、まずは相談してください。
近くの年金事務所、役所の窓口、制度に詳しい人、力になれる人は必ずいます。
皆で助け合い、支え合いましょう。
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