入院、手術、通院・・・病気やけがの治療にはお金がかかります。
少しでも負担を抑えるために様々な公的支援がありますが、中には自己負担もあります。
その中で負担が大きいのが「差額ベッド代」です。
今回は「差額ベッド代」の概要と支払い条件を解説します。
「差額ベッド代」の概要
差額ベッド代は「特別療養環境室料」と言います。
入院環境の向上を図り、患者の選択肢を増やすために認められたもので、入院料とは別に患者が負担します。
その条件は
- 病室の病床数は4床以下であること。
- 病室の面積は一人当たり6.4㎡以上であること。
- 病床ごとのプライバシーの確保を図るための設備を備えていること。
- 特別の療養環境として適切な設備を有すること。
と決められています。
個室じゃなくても4床以下だと差額ベッド代がかかります。
そして入室希望の患者に対して
- 保険医療機関内の見やすい場所、例えば、受付窓口、待合室等に特別療養環境室の各々についてそのベッド数、特別療養環境室の場所及び料金を患者にとって分かりやすく掲示しておくこと。
- 特別療養環境室への入院を希望する患者に対しては、特別療養環境室の設備構造、料金等について明確かつ懇切丁寧に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること。
- この同意の確認は、料金等を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うものであること。なお、この文書は、当該保険医療機関が保存し、必要に応じ提示できるようにしておくこと。
患者への説明と同意が必要となります。
※出典元:厚生労働省 関東信越厚生局 保険外併用療養費 通知
「差額ベッド代」実際の費用は?
差額ベッド代はどのくらいかかるのでしょう。
総病床数に占める差額ベッド代がかかる病床数の割合は
1人部屋 | 181,515床 (13.9%) |
2人部屋 | 41,704床 (3.2%) |
3人部屋 | 4,625床 (0.4%) |
4人部屋 | 38,911床 (3.0%) |
合計 | 266,755床 (20.5%) |
全体から見れば多くはありません。差額ベッド代がかからない大部屋が主流です。
では1日当たりの平均費用を見ていきます。
1人部屋 | 8,018円 |
2人部屋 | 3,044円 |
3人部屋 | 2,812円 |
4人部屋 | 2,562円 |
平均 | 6,354円 |
個室希望で8,000円以上が目安となってきます。
「差額ベッド代」が不要な場合があります
差額ベッド代が不要なケースがいくつかあります。
同意書による同意の確認を行っていない場合
同意書に室料の記載がなかったり、患者の署名が無いなど、内容が不十分な場合は差額ベッド代は請求されません。
「治療上の必要」により差額ベッド室に入室した場合
例として
- 救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者
- 免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者
- 集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者
- 後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。)
- クロイツフェルト・ヤコブ病の患者
など、治療上必要であれば差額ベッド代は請求されません。
病棟管理の必要性等から差額ベッド室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合
例として
- 感染症に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる場合
- 差額ベッド室以外の病床が満床であるため、差額ベッド室に入院させた患者の場合
など、患者の選択によらない場合は差額ベッド代は請求されません。
※出典元:厚生労働省 関東信越厚生局 保険外併用療養費 通知
病院と話し合いましょう
治療上必要な場合は差額ベッド代を気にする必要はありません。
ただ大部屋を希望してたにもかかわらず空いてない、そんな時はトラブルになりやすいです。大部屋が空くまで待てればよいのですが、病気やけがは待ってくれません。
「同意書に署名を拒否する」
「制度上支払う必要はない」
「支払ったら損だ」
もしそんな考えで病院側と話し合ってしまうと関係は悪くなってしまい、治療以前に余計な気を使ってしまいます。治療は病院と患者の協力なしには成り立ちません。
まずはこちらの希望をしっかり伝えましょう。
そのうえで大部屋が空く時期、それまでかかる費用、支払い可能な費用を話し合いましょう。病院側も理解してくれれば柔軟に対応してくれます。難しい場合は第三者を入れましょう。
話し合うためにも、差額ベッド代の概要、条件など知識は必要です。
「差額ベッド代」に備えよう
差額ベッド代は希望しなければ支払う必要はありません。
ただ病気やけがの症状次第では希望することもあります。
私が胃がんで入院した時は個室を希望しました。落ち着いた環境で治療に専念したかった、手術後はトイレに行く回数が多くなるだろうと思ったのが理由です。
そして入院が長期になると差額ベッド代も高額になります。
差額ベッド代は個人の都合ですので医療費控除の対象外です。
事前の備えは欠かせません。
いざという時の備えは貯蓄、保険、何より日々の健康管理が大切です。
(出典)
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